日立市諏訪町産廃処分場反対

日立市諏訪町の産業廃棄物最終処分場建設に反対するブログです。

坂本博之弁護士学習会を振り返ってみる

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 7月26日、坂本博之弁護士をお呼びして、学習会を開催しました。「公共関与型産業廃棄物最終処分場問題について」のレジュメの一部を抜粋して、ご紹介します。  ※坂本博之弁護士「たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす弁護士の連絡会」事務局長。

 

 【廃棄物処分場について知ろう】

廃棄物とは何か

廃棄物処理法2条1項
 「この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。」

有価物か無価物か
有害物かそうでないか
一般廃棄物と産業廃棄物

放射性物質及び放射性物質によって汚染された物は別の法律で規制
但し、原発から事故によって放出された放射性物質を規律する法律は、放射性物質汚染特措法しかない。

※残土は廃棄物ではない

廃棄物処分場とは何か

①中間処理施設と最終処分場がある

②最終処分場には3類型がある

a 安定型処分場:素掘りの穴を掘って、単純にゴミを捨て、埋め立てるもの
安定5品目(プラスチック屑、ゴム屑、金属屑、陶器・ガラス屑、建
設廃材)に限る。捨てられるものが化学的に安定であって、有害物質
を出さないことを前提とする。

b 管理型処分場:穴の底に遮水工(ゴムやポリエチレン等のシート等)を張る、放流水の処理をするなどして、有害物質が処分場外に漏れださないように管理するもの。

一般廃棄物最終処分場(家庭ゴミの焼却灰の処分場(例、東京都日の出町、福島県田村郡小野町)として利用されるほか、種々の有害物質を含む産業廃棄物処分場として利用されている。

c 遮断型処分場:処分場の周囲を完全にコンクリート等で覆って、絶対に有害物質が処分場外に漏れださないようにしたもの。鉱滓などを捨てる。

現代のゴミの特質はキケン

様々な有害物質の宝庫
 (ダイオキシン類、重金属類、無機塩類、未規制の有害物質、放射性物質)    処分場は例外なき欠陥物

 

処分場を造られることの問題点

・循環型社会に反する
・良好な環境が破壊される
・地域社会が破壊される
・田舎が都会の犠牲になる
   ⇒ 処分場に反対することは地域エゴではない

新たな処分場は必要か?

・少なくとも、住民が受入を拒否している場所に造る必要はない
・ゴミ処分場は余っている→ゴミの受け入れ価格が下落している→ゴミ処分場は「儲からなくなっている」→儲けようと思うと、危険なゴミを高額で受け入れることになる。

・最終処分場に持っていかない方法が検討されている(それが正しいということでは必ずしもない)

 

 【管理型処分場の問題点】

管理型処分場の生命線は、遮水工と放流水処理施設である

 管理型処分場は、様々な有害物質を貯蔵する。その有害物質を処分場外に漏出させないため、遮水工を設けて場内の有害物質が地下水等に漏出しないようにする。

 場内に降った雨水は、有害物質に触れるため、その有害物質を処理施設で除去してから外部の河川等に放流する。

遮水工の問題点

・ 最近の管理型処分場は、「多重構造」と称して、ゴムやポリエチレンの遮水シート(厚さ1.5mm程度)を2枚敷き、2枚のシートの間に不織布等の緩衝材を敷き、さらに遮水シートの下に厚さ50㎝程度の粘土層を設けることが多い。遮水シートが破損しているかどうかを確かめるための漏水検知システムが設けられることも多い。
・ 遮水シートは紫外線に弱い。
・ しかし、遮水シートの弱点は紫外線だけではない。ゴミの重力(特に処分場の斜面では、場所によって加わる重力に差があるから、常に強い剪断力が働いている)、ゴミに含まれる化学物質、作業による圧力が加わる。作業の際に重機によって破損することもある。
・ 遮水シートの継ぎ目(総延長数㎞に及ぶ)が最大の弱点。
・ 日本遮水工協会という業界団体も、耐久性の目安は15年としていた。
・ 粘土層は、必ずしも均一ではない。
・ 粘土層であっても漏水を止めることはできない。
・ 地下水は、遮水シートに対しても粘土層に対しても脅威となる。
・ 漏水検知システムは本当に的確に作動するのか?
・ 漏水検知システムによって汚水漏れが検知された場合の補修は本当にできるのか?
・ 多くの処分場で遮水シートの破損事故が発生している(東京都日の出町谷戸沢処分場、福島県小野町のウィズウェイストジャパンの処分場、千葉県君津市の新井総合施設の処分場、福岡県久留米市一般廃棄物処分場…etc)。

浸出水処理施設の問題点

・ 処理施設では、多くの重金属類等の有害物質は除去できない。
・ 処理施設では、無機塩類は除去できない。

      ⇒管理型処分場の下流では、しばしば塩害が発生する。

 

 【公共関与型施設の問題点】

事業者と監督官庁が同一であり、十分な監督を行うことができない

・様々な審議会、検討委員会には、批判的見地を持つ人、住民の立場に立つ人が委員に入ることはない。このたびの「あり方検討委員会」も、ご多分に漏れず、「ありき検討委員会」となっている。

行政が行うことは、民間の業者以上に、情報を隠す

・エコフロンティア笠間処分場(ふじみ湖処分場)を造る際にも、雨水ではなく、地下から浸みだした水が溜まったものだというのが住民側の見解であったが、県は、排水しているところを「危険だ」などと言って、決して住民に見せなかった。

お役所仕事

・全国的に見ても、公共関与型産廃処分場は赤字経営のところが多い。
  (山梨県環境保全事業団が北杜市に造った処分場は、埋立完了まで赤字となることが明らかとなったので、閉鎖された)  
・エコフロンティア笠間は、「オーバーナイトローン」でしのいでいた

・周囲の最終処分場よりも料金が高かったので、ゴミが集まらなかった

・役人がやっているので、2~3年で人事異動があり、無責任となる

 行政が最終処分場を作ってあげるということは、ゴミの減量の方向に働かないのではないか?

 

 【エコフロンティア笠間処分場の問題】

エコフロンティア笠間処分場

・最終処分場と焼却施設が併設されている
・焼却施設(高温ガス化直接溶融方式)から発生する焼却灰(溶融スラグ)は、「重金属等の溶出がほとんどなく、砂に似た性状を持つことから、当所では溶融スラグをこれら天然土木資材の代替品としてリサイクルしています」→しかし、やっていることは、「遮水シートの保護材」と称して、処分場に埋めている

回復しつつある自然が壊された事案

・もともと採石場であったが、湧水が激しかったために放棄された。→その後、自然が回復しつつあり、透明度の高い水をたたえた湖が出現し、各種のトンボ等の生息地となった。
・県がふじみ湖の水抜きを始めたら、周囲の住民の井戸水が枯れるということが起こった。


 【日立市諏訪町が候補地の処分場についての問題点】

・そもそも、どうして県が産業廃棄物最終処分場を用意してあげるのか疑問
・管理型処分場は例外なき欠陥処分場である
・上記の公共関与型処分場の問題点が全て当てはまる
・事業主体である茨城県環境保全事業団には、エコフロンティア笠間と同様の問題点がある
・廃棄物処分場が造られて地元が振興した実例は聞いたことがない